久しぶりに行った教習所の帰りだった。
初めての路上教習でしかも2時間連続だったので、それなりに疲れていた。
夕飯なに食べようかなーと考えながら自転車にまたがったそのとき
駐輪場の向かいの街灯の下で手招きをする小さな人影を見た。
めっちゃビックリして、自転車倒しそうになった。
しかし、よく見てみるとかなり年配のおばあさん。
世にも奇妙なアレかなーとも思ったが
特に透明に見えたり輪郭がかすんでたりはしない。
まだ手招きを続けている。
車椅子に乗っているから何か困ったことでもあるのかと思い、立ちよることにした。
「こんばんはー」と言いながら自転車をとめる。
「え?」と聞き返される。
「こんばんわー」再度大きな声で言ったが
聞こえないのか、首をかしげてから、語り始めた。
「そこの門がね、いつも開けっぱなしでね。もういやな感じよねー。前は閉めてくれてたのに。この前、言ったんだけどねー。」
何を言ってるのかよくわからなかったが
「そうなんですねー」うんうんとうなづいた。
「今ね、そこの車が出るからね、ほら出たよ。ここで曲がるんだよ。ほら曲がったね。これから東京方面へ向かうんだよ。錦糸町に行くんだ。」
「ん?あれはまた車か。また出ていくんだよこれが、いやになっちゃうね。」
「あの人は大きいね。太りすぎなんじゃないの?がははは」
通り過ぎる車や人を実況していくおばあさん。
ぼくは、すぐに帰るつもりだったのだが
今日は少しだけおばあさんとおしゃべりしよう。そう思った。
「そこに1人で住んでんだよ。寂しいでしょ?こんなおばあさん誰も相手にしてくれないからねえ。わたしゃ大ボケだよ。何歳に見える?97.6歳だよ。」
「97.6歳ですか!?全然お元気そうに見えますね!!」
年配の方とこんなに話すのは、初めてかもしれない
今までは、スーパーで「それ取って」って言われるくらいかな
“おしゃべり”の仕方がわからなかった
果たしてぼくはこんな調子に乗った反応の仕方でいいのだろうか。。。
普段のぼくでも、リアクション大きいと言われることが何度かある。
そんな心配とは裏腹に、おばあさんはとても楽しそうにいろんな話をしてくれた。
「昔はよく働いたよ、ここらがみんな畑や田んぼで、きゅうりやとまとなんかを育てては売りにいったもんだ。リアカーに載せて、自転車でこいでいくんだよ。あの大きな橋も超えてさ。当時のじいさんばあさんにはよく褒められたもんだよ。わたしゃそこらじゃ有名人だったのさ。」
「あのときは楽しかったもんさ~。うんうん、昔はよく働いたよ。若いのはいいねえ。」
他にも、昔の地名なんかもいろいろ教えてくれた。
20分ほど話をした。
「じゃあ、そろそろ時間も遅いので、今日は帰りますね。ぼくここの教習所通っているので、また来ますね。」
「たまには、ばあさんと話すのも悪くないでしょ?え?がははは」
「はい、とても楽しい時間でした。ぜひまたお話聞かせてください!」
「今度はね、なにかご馳走してあげるよ。ね、またいらっしゃい。」
「はーい、また来ますー。失礼しますー^^」
最後は手を握ってお別れをした。
肌が弾力がなく、骨が浮き出てるように感じた。
この20分がおばあさんにとって楽しい時間であったのならば、ぼくはうれしい。
こうして、家に帰ったのですが
ホントに最初はびっくりした。
おばけと思いました。
話してみると、認知症の方なのかなと思いましたが、意外と楽しくって、あまり愚痴愚痴言わない人もいるんだなーと。
あと、ボケって本人も理解してるんだなーと再確認。
一回認知症について勉強したことがあったのですが、もうすっかり忘れてしまってて。
おばあさんがどんな気持ちでなにを感じているかを考えるには、少し知識不足を感じました。
また少しそれについての本読んでから、またおばあさんと会えたらなーと思ってます。
普段話さない方と話せるのはいい機会だと思いました!